2008年6月18日(水)しんぶん赤旗九州・沖縄面
水曜随想
苦難の扉をひらく
田村貴昭
福岡労働局で派遣労働のあり方について協議をしていたら、あの秋葉原事件の話題となった。「誰でもよかった」と17人を殺傷した25歳の青年は、派遣労働者だった。
警察の取り調べで、「雇用や将来への不安を一方的に募らせていた」と報道されている。
「俺が余る理由は不細工だから」「彼女がいれば・・・」「望まれて生まれず、望まれて死ぬ」――彼がネットの掲示板に書き込んだと思われる言葉はなんとも空しい。が、いま多くの青年が似たような思いでいるのではないか。
一昨日、鹿児島の星塚敬愛園を訪問した。ハンセン病問題解決法が国会でようやく成立したことをみんなで喜んだ。隔離、断種を強制され、筆舌に尽くせない人生。しかし、差別と偏見と向き合い、患者たちはたたかいつづけた。解放への展望を持ち、支え合う仲間とともに。
あの青年に「一人じゃないよ」と励ます仲間がいれば、たたかいの向こうに扉が開かれることを知る偶然があれば・・・そんなことをあの日以来考えている。
被害者とその家族の日常と将来に思いをはせれば、彼の罪は絶対に許せない。だが、彼を「特殊な人」で終わらせ、裁くだけでは解決できない。
働いても努力しても報われないワーキングプア。人間をモノ扱いする働かせ方が、事件の奥底に横たわっているようだ。「もうどうなってもいい」「犯罪で注目をあびたい」――勝ち組、負け組を選別する「構造改革」を推し進めてきた人たちは思い知るべきだ。
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